熊本支部・臨床宗教師入門講座が行われました。この働きは東日本大震災を通して、被災者の心のケアを宗教者として関わることのできる臨床宗教師を養成する学びです。宣教活動を目的とせず、痛み苦しむ人に寄り添う宗教者のありかたを学んでいます。
養成講座の中で「死の体験シュミレーション」というワークショップがありました。一人に8枚のメモ用紙が配られ、4つのテーマで2つずつメモに書いていきました。テーマは「大切なもの」1、大切な物。2、大切な自然。3、大切な活動。4、大切な人。それを書き終わったところで深呼吸をして始めます。講師の方がストリーを読みます。それは、ある時小さな腫瘍がみつかり、末期がんとわかり余命を生きていくというものです。治療が始まり、入院し、死を迎えていく。その節目、節目に書かれたものを1枚ずつ捨てていくというワークショップです。
初めは捨てることに抵抗がありました。大切な人など捨てられるわけはありません。悩みながら考えながら捨てていきます。ところが途中から話を聞きつつ「今度は何を捨てようか」と考え始めるのです。そうやって最後に残った物は何だったか。人それぞれです。これは人に見せるものではないので、自分だけしかわかりません。最後まで残したものは何だったか。自分でも驚くものでした。やっぱり自分はここに支えられているという確認ができました。しかし、最後に息を引き取ったあと、「最後の1枚を捨ててください。これで終わりです。あなたは死にました」と言われました。最後は何も持たない。そして委ねる事しかできないのだと心の底からの思いが湧き上がりました。
宗教者はこの最後に立ちあうのです。そしてそばにおられる家族に寄り添うのです。そこには宗教者しかできないことがあります。それは神様と共にそこに寄り添うということです。その場所から逃げずにそこに立っているということなのです。