創世 11:31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向かった。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。
ノアの洪水物語の最後に、息子セムの系図がでてきます。ところが良く読むと、それはテラの家族の消息、そして息子アブラム夫婦とロトのカナンへの大移動を記すためのようです。11章の後半を要約すれば、ロトの父ハランはその父テラよりも先に死んだこと。アブラムの妻サライは子を産むことができなかったこと。テラは息子アブラム夫妻とロトとの大移動の途中でハランに留まりそこで死んだこと。それらがまとめて書かれています。すべてはその後にある「信仰の父アブラハム物語」のプロローグになっています。アブラハムが生きた土地からはなれ、新しい約束の地に向かったことの初めの部分です。
生きてきた土地を離れるということは、人生を変える出来事だと言えます。東日本大震災救援活動調査のため、震災2週間後に先遣隊として現地宮城県にはりました。ルーテル教会としてどのような活動ができるかを調査しました。被災地を訪問、避難所の状況など動き回りました。そのとき、宮城県社会福祉協議会災害救援センターの方から2つの要望をいただきました。1つは専従のスタッフを送ってほしいということ。そしてもう一つはルーテルとして3ヶ月後の支援体制を考えて活動してほしいとのことでした。この3ヶ月後というのは、避難所にいる方々に厳しい決断をしていただかねばならない時期です。仮設住宅に入居するか、破壊された家に戻るか、土地を離れ他府県に移動するか。この時に自殺する方が最も多く、心のケア、実際的なケアが一番必要とされるからということでした。生きてきた土地を離れること。まだ行方不明でそこに眠っている家族をおきざりにできないこと。それでも生きて行くための決断です。ルーテル教会はそこで何ができるでしょうか。そのために現在の活動があります。
アブラム物語は「息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向かった」から始まりました。信仰の父・アブラハムが生きてきた土地を離れたのは、神様の約束があったからです。神様が約束された土地を示され、信仰によってそれを受け入れたからです。私たちの活動もみ言葉と信仰によってなされていかねばならないと思います。