東日本大震災で被災者の方が津波の全貌を知ったのはかなり時間がたってからです。携帯電話のワンセグでテレビが見えたがすぐに通信不能になった。目の前の風景で大変なことになったと思ったが、石巻市街だけのことだと思ったそうです。しかしラジオからの情報で、津波が到達した地点を聞き、これはただごとではない。あそこまで来たということは、家族はだめかもしれない。目の前の状況とラジオの情報、そしてなにもわからない3日間。その後わかったことに言葉を失くしたと話してくださいました。個を知ること、全体を知ること。それがつながるとき大震災被害をどのように受け取っていいのか、いまもまだわからないといわれました。
ヨハネの黙示録は、神様を「アルファ」であり「オメガ」であるといいます。ギリシャ語のアルファベットの初めと最後の文字のことです。つまり永遠という意味です。すべてを知っておられる方が神様だというのです。
いま熊本地震を振り返っています。ところが、その時のことを思い出そうとしても思い出せないという言葉をよく聞きます。なぜかその時のことを思い出せないと。そういえば自分もそうかもしれません。なぜ思い出せないのか。2回もあった地震なのに。きっと思い出したくないという心の現れのようにも思います。しかし思い出せなくても、いま何があったかを知るのが支援活動の一歩かもしれません。被災者が支援活動する時の難しさはそこにあるかもしれないのです。それでも、あったことは確かなのです。
人間にはわからないことはたくさんあります。私に起こっていることの全貌も見えていないものです。しかし、神様はすべてを知っておられる。全体をみて個をみておられる。そのような存在である神様が共に寄り添っておられる恵みを感謝しています。私たちの生活の全体は神様が知っていてくださると言う安心感があります。